鈴木伸一さんが語るアニメ「鉄腕アトム」

杉並アニメミュージアムで開催中のイベント
手塚治虫のアトムと孫悟空展」に行きました。
http://www.sam.or.jp/event.php#78

この展示会は今年4月末から5月にかけて中国の杭州・上海で
行われた「The Original Animamix」という企画展内
手塚治虫 ストーリー漫画とテレビアニメーション展」の巡回で、
生原稿やセル画などが展示され見ごたえがありました。

そして、展示と併せて鈴木伸一館長が語るアニメ「鉄腕アトム」の
トークイベントがあり、参加してきました。
鈴木伸一さんといえば「トキワ荘」住人で、その仲間で
結成された「スタジオゼロ」では
藤子先生や石森、つのだ先生と共にアニメ制作を、そして現在も
アニメーターとして現役で、海外のアニメ研究家としても
著名な方で尊敬します。

今回アトムのアニメ作品を語る際の第一声は
「アトムは国産テレビアニメの第一号と言われてますが、
実はそれより先に私が在籍したおとぎプロの方が毎週1分間の
おとぎ話シリーズを1年間手掛けていたんですよ」と話され、
スタジオゼロが制作したアトム第34話「ミドロが沼」の上映後の
トークでは興味深いお話が聞けました。

1.虫プロのスタッフに夏休みをあげるためスタジオゼロに外注の依頼

2.鈴木さんと石森先生が虫プロに伺い、制作担当者と手塚先生から
原作マンガのゲラ刷りを渡され(絵コンテなどはなかった)、
その場で金額を提示された。

3.石森先生がAパート、鈴木さんがBパートの絵コンテ作成後
藤子先生、つのだ先生が加わり、昼はマンガ、夜にアニメ制作に着手。
原画、動画の区別も無く、鈴木さん以外はほとんどアニメ制作には
素人だったが、鈴木さんは他のマンガ家の手直しはしなかったとか。
(プロマンガ家としてのプライドある仲間への配慮?!)

4.決して上手い作品では無かったが、藤子F先生が手掛けた
ラクターの上での格闘シーンはなかなか上手いと鈴木さんは感じた。

5.その後、鈴木さんの作家活動25周年イベントの際、ネガを探したが
見つからず、一説によると出来に不満足だった手塚先生が
消去したと噂され「幻の作品」だったが、数年前輸出してた
アメリカのフィルムで発掘、DVDで現在は発売中。

さすが、制作スタッフ自らの解説で今回、
石森先生と手塚先生が手掛けたトカゲのスケッチや、
当時のスタジオゼロの建物を鈴木さんが描いたスケッチブックなどが
披露されました。
(残念ながらちょっと見えにくかったので、企画側には
プロジェクターなどの準備をお願いしたい所です)

ゲストとして脚本家の辻真崎さん、お茶の水博士の声優だった
勝田 久さんが登場するなどサプライズもありました。

他にも「ミドロが沼」では、藤子両先生似のキャラが
チョイ役で登場するけど、小池さんのキャラが登場しないのは
まだ後の話・・という前置きで、小池さん誕生のエピソード話まで。

当時、仲間うちの誕生日会で寄せ書きサインをプレゼントしあってて
その時に森安さんだったかが描かれた似顔絵が好評で
それを面白がった藤子先生が「オバQ」に登場させたとか。
(機しくも翌10日にはNHKのクイズ番組で安孫子先生、鈴木館長も
登場され、ファンとしては嬉しい二日間を過ごしました。)

トークイベントの最後に鈴木さんは、現代の世界のアニメの
約6割は日本作品だが、現状はメインスタッフ以外の作業は
人件費の安い国外の外注に出されており、日本国内で人材が
育ちにくい現状を嘆いておられたのが印象深かったです。

個人的には他にも色々鈴木さんにお聞きしたい事は多々ありましたが
実現できず少し残念でした。
この建物にはDVD作品も閲覧出来るので(交通がやや不便ですが)
鈴木さんの著作を読む傍らまた訪れたいと思います。

「ひとりから始めるアニメのつくり方」洋泉社
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4862480799/sr=1-1/qid=1160491716/ref=sr_1_1/250-9371849-6351411?ie=UTF8&s=books