ニコラ・ド・クレシー in 日仏

飯田橋日仏学院にてトークイベントに参加しました。
今回は京都の「アーチストレジデンス」という
イベントに合わせての来日だそうです。

約10年前、渋谷パルコの書店で本に出会って依頼、
衝撃を受けた作品の作者にまさかお目にかかれるとは!
作品の印象は強く絵柄は印象的でも、
同じイラスト仲間の間でも作者名をなんと呼んでいいのか
わからない状態がしばらくでした。

彼が背景とキャラのカラーデザインを手掛けたアニメ「老人とハト」
(DVD「ベルディヴ・ランデブー」収録)上映後、
BD研究者・細萱敦さんとクレシーさんの対談形式でトークは進行。
来場の希望者には翻訳機が支給され、臨場感ある
対話が聞く事ができ、これまでの著作の解説はじめ、
作品によって目的が様々という事が分かり大変有意義なイベントでした。

クレシーさんの作品は近年、続々新刊を洋書屋で見る機会が
あるのですが、1册あたりの価格がジャンプコミック10册分
くらいするのでなかなか容易に購入できません。
ハードカバー&フルカラーの魅力はその価値十分。
ただ、もう少し安ければなあ・・

1966年生まれのクレシーさんはフランスのディズニースタジオに
務めながら三年かけて「Foligatto」を出版。
この作品ではクリムトやジェームス・アンソールといった画家の
影響があるのだとか。
独特なフォルムのキャラクター、渋い色使いと白場のコントラストが利いた色彩、
そして大変密度の濃い作品は衝撃的でした。
ちなみにこの本、初版と現行ではカバー絵は異なるようで
直した原因は「気にいらなくなったから」。
私が所有するのは初版だそうで、ラッキー!?

次作「ミスターフルーツ」ではわざとモノクロでシンプルな
作風にチャレンジ。
その理由は、絵に力を入れ過ぎると読者がストーリーに
ついてこれなくなるという反省からで、
下描きなし、鉛筆の線をコピーして、クレヨンで影を着けたのだとか。

その次の「ビバンダムセレスト」では再びカラーに戻り、
悪魔が粘土みたいなものを錬ってる複雑な物語・・
この作品を構想中、半分夢を見ながら描いていたそうです。

その後、日本の雑誌「slip」という雑誌で15ページの書き下ろしを
依頼され、日本のコミックのアクション描写の細かさに着目し、
そのような作品を描いた。
後に加筆して100ページの「PROSOPOPUS」という作品集としてフランスで出版。
この作品の着彩はCGで行われた。

また、日本の「JAPON」という日仏のアーティストが
互いの国について描きおろした15ページの作品は、
その後ブラジルの滞在記を追加して「Jarnal d'un fantome」という
本になったとか。

ルーブル美術館(本物!)から「美術館が登場する作品を自由に」という依頼で
描いたのは「pierlode slaciaire」(Glacial Period)という本。
氷河に埋もれた美術館を発見し、そこにある作品(画像は本物の絵画)を
でたらめに解説する・・といった内容。

・・他にも1930年代のニューヨークの思いを描いた
作品集や、旅行スケッチを集めた作品集「リスボン」などが紹介

その他、今回知った事は
・影響受けた画家・・ドーミア、アンサール、ジョルジュ・グロッソ
・使用画材・・アクリル、水彩、グワッシュ
・仕事中、音楽を聴きながら描かない
・長編アニメの制作は現在休止中(予算の都合)
・作品を描く際、出版社の意見される事はなく、完成時
訂正依頼があれば、納得した上で応じる
・原稿サイズは本よりやや大きめで、直接コマごとに描く
・アニメ制作時、スタッフとやり取りする事が面白い
・作品のメッセージは、言葉で伝えられるものではない
読者の意見に逆に刺激を受ける事もある

イベント終了後、サインをいただきましたが
なんと胴体からスラスラと描かれ、驚き!

会場では2003年川崎ミュージアムのBD研究本と
タンタンの下書きラフが掲載された作品集を購入しました。

本人のサイトでスケッチが随時更新されてるようですが
残念ながら検索しても発見できず。