柳瀬正夢展

先日、まんだらけマニア館のレジ前にあった一枚のチラシに目に留まり
店員の方に案内をいただきました。
その内容は「柳瀬正夢展」。
http://www.musabi.ac.jp/library/muse/tenrankai/kikaku/2008/08-05yanase.html

聞き覚えのない作者名だけど、レトロで奇妙なキャラクターの絵に
興味津々。しかも会場は武蔵野美大・・
平日だけど、研究者によるシンポジウムもあるそうで行って来ました。

学内はチラシの奇妙なマンガのセリフが立体看板となっており、
キャラが大きなパネルや、図書館の壁一面にはめ込まれ
すげえインパクト!

展示会は入場無料で、図録もボリュームがあるのに、カラーも豊富で
1000円と安い!

チラシの謎のマンガの正体は、柳瀬正夢の別ペンネーム、
夏川八朗名義の作品「パン太の冒険」という1934年
よみうり少年新聞連載のフルカラー作品だとか。
宍戸左行「スピード太郎」の影響を受けて描かれたと思われ、
当時新しかった宇宙や地学の描写もあり、バタ臭い雰囲気も相まって
とてもイイ感じ。1ページごとの連載ですが、残念ながら19話で未完です。

作者の柳瀬正夢さんは1900年生まれの方で、
画家、プロレタリアアート反戦マンガ家、
絵本作家、装丁家、舞台装置・・・と大変色んな側面を持った
活動をされた方だったそうです。
出身は、当時海外の玄関口でもあった福岡の門司、
反戦マンガを描いてる頃からドイツのグロッスという作家の
影響を受けていたとか。
当時の日本作家は他にも素敵な作家が多く
小野佐世男、田中比左良などの作品も今回一部展示されています。
戦前文化のクオリティーの高さをあらためて感じました。

会場は、柳瀬さんの大変幅広い活動歴を振り返ったものでしたが、
惜しくも昭和20年空襲で亡くなった45才までの仕事と知り無念!

ご本人が原稿の保存に気をつけられたそうで、
当時発見されたら即刻消却されただろう反戦関連の印刷物や、
戦前のマンガの印刷物と一部の原稿も大切に保存され、
見る事ができました。

ムサビでは遺族の方から作品を寄贈され、過去にも数回
油彩や反戦アート関連の展示を行ってきたそうですが、
今回は思いきってマンガという切り口からの展示で行われ
会場の展示設営も、赤く塗った木材を随所に置き、
キャラを大型パネルにするなど大変斬新な展示表現でした。
文化庁がマンガに対する取り組みの推奨も影響してるとか)

今日のシンポジウムでは、それぞれ異なった側面の
ベテラン研究者方や遺族の方の発言が興味深く、
それらの研究成果がより整理され、広がると良いなと感じました。