伊藤比呂美、井上雄彦トークイベント

雑誌「SWITCH」を発行してる出版社スイッチ・パブリッシング主催で
詩人伊藤比呂美さんとマンガ家井上雄彦先生のトークイベントが
西麻布の出版社の地下にあるカフェであったので参加してきました。

スラムダンク」は僕の中3の頃連載が始まり、
それまで丸っこい絵柄の作品が好きな自分が、珍しく8巻
(三井がバスケ部復帰を悲願するシーン!)を購入し、
以後、相変わらずドラゴンボールなどを読みながらも
アクリルで描かれたと思われるカラー絵に惹かれていき、
劇画的な表現の面白さを教わった作品でありました。
バガボンド」も新連載の時から、「モーニング」を
「まだかな〜」と思いながら読んでます(笑)

詩人の伊藤さんは、一年くらい本を読めなくなってしまった精神状態の
頃に「スラムダンク」に偶然出会い、「現代の戦記もの」と
感じたのだそうです。
その後、「バガボンド」を描く事になったのも必然であったこと
だろうとも。
いちファンと作者の対談・・といった空気で対談はスタートしましたが、
時に詩人ならではの解釈も飛び出しあっという間に1時間半が過ぎてゆきました。以下、興味深かった発言をピックアップしてみます。

・話が進み、進行にもがくと原点に還る事にする。
スラムダンク」の後半に初期のセリフ「大好きです」を出したのも
そんな思いから

・自分の中で「スラムダンク」は鮮度を大事にしたい作品だったので
周囲の反対はあったが、人気のある作品は作者の意図で終了させるべきと
意志を貫いた。

・キレイな線ではなく、生きてるように表現したい

・資料の写真は出版社のカメラマンが撮ってくる場合もある

・バスケ部の各チームの監督は今の方が描けるかも知れない、
ただし「勝つ」という強い信念を持った高校生を描ける自信はない
(なぜ戦うのか?という方に気がいってしまうから)

・「湘北以外のチーム以外で描いてみたいチームを挙げるとしたら?」の
問いに「山王か翔陽」・・負けた事があるチームだから

・過去の作品は当時でしか描けないものであるので、描き直しを
したいとは思わない

・初期の頃、恋愛や柔道部を登場させたのは編集の意向
今思えばそれも正しかった

・デビュー作の頃は読者目線の批評眼と、書き手としての自分の
実力のバランスが分かってなかった(根拠のない自信)

・「バガボンド」では重い印象を出したくて夜のシーンを意図的に
描いている

・言葉という概念がない小次郎は、モチーフとして可能性が無限にある
が、その分ハードルが高くなりすぎてしまった
今後の展開は流れに身をまかせるしかないと思ってる

・「スラダン」は将来読者として楽しめるかもしれないが
「バガ」は描いてる時の苦しさが大きく、読み返せない
特に18,19巻の小次郎編終了後は苦しくて1年くらい休筆した

山下和美不思議な少年」は読み切りなのに「バガ」の何冊分にも
匹敵する物語展開が描かれている
自分の作品は、キャラの展開に従う描き方しかできず、
体力的にキツイ

・休載が多く、リアルタイム読者には申し訳ないが
「10年後あらためて読んで!」といいたい

・「リアル」の高橋の父が息子にいうセリフは、投稿作品を
描いてる自分のアシスタントに向けたメッセージでもある

最後に質問コーナーで「伊藤一刀斎のニコニコ笑う達人という
キャラのイメージは平田弘史先生がモデルではないか?」と
自分は以前から気になったので思いきって聞いてみたところ
「特に意識はしてない」との事でした。

今後もまたこのような機会を・・!!