酒井七馬本を閲覧

雨の中、上野の「国際こども図書館」へ。
一週間の内、自分は月〜金は仕事なので、土曜しか開館中
足を運べないので天候が悪くてもがまんせねばならない。
駅から上野公園を随分歩くため、あまり便利な場所とはいいにくい。
貴重な資料が見れるのは有り難いが、できれば永田町の本館と
もう少し近い場所にしてもらえないだろうか?(政治家の皆様!)

今日は酒井七馬関連の作品を中心に閲覧した。
幻の「新宝島」原作者・酒井七馬の作品が直接手にとって読めるなんて
信じ難かったが、先日出版された「謎のマンガ家・酒井七馬伝」には
きちんと蔵書元がクレジットされてあったので、ネット検索したら
確かに!「正義の一弾」「海底魔」「冒険魔海島」「怪船長」・・
など数冊を拝読。

新宝島」は子供の頃「まんが道」で藤子先生に衝撃を与えた作品、
という刷り込みがずっとあり、どんな作品なのか思いを巡らせて
いた。(当時すでに講談社の全集はあったが、自分の地元では
入手できなかった)
想像する過程で、作品内容もさる事ながら、表紙そのものの
持つインパクトがドンドン大きくなっていった。
明らかに手塚調でないキャラクターなのはなぜなのか?という疑問は
このカバーが酒井七馬によるものであるという事を随分経って知った。

今回、これらの本を見てロゴの力強さ、色使い、特有のバタ臭さに触れ、あらためて「新宝島」と同じ書き手によるものである事が実感できた。
作中のPOPなキャラクター描写と、カラフルな色使いは
当時どのくらい画期的なものであるかは伺い知れないが、
本によってはフキダシ文字が手描きで、筆跡はどこかオッサンくさく、
そのチグハグさが可笑しく、悲しかった。
見た事もない宝島を巡って少年が大人と競って冒険するという
テーマは、敗戦間もない大人社会を信じ切れない
子供の夢を映していたのだろうか。

今回見た中で、僕が一番驚いたのは西部劇「正義の一弾」の
本としての完成度の高さだった。
ペーパーバックのような表紙から、細かなタイトルやマーク、
登場人物紹介まですべて凝った手描きで、七馬の西洋文化への
強い思い入れが伝わってくるようだった。
黒ベタの面積が多く、アメコミ風のペンタッチも見事で、
さいとう・たかを楳図かずおが憧れたというのも頷ける。
藤子A先生にも影響を与えたのだろうか?

この他、手塚治虫「妖怪探偵団」も閲覧できた。
現在では不適切な表現が含まれてる為再刊は難しいと噂は聞いていたが、
一章目のサブタイトル「狂人病院の怪盗」、
そしてひとコマ目から「ぼくはキ○ガイじゃない」と精神病院の前で
わめく患者と、それをなだめる医者のヒゲおやじ(苦笑)

途中、なぜか猿飛佐助七代目の少女、なんてのも突然登場して
精神病患者を操る男と対決する・・という話だが
正直、内容もそんなに面白くなく(スイマセン)
復刊するとしてもハイリスク、ロウリターンのような・・?

色々見れたので、いつも通り複写して帰宅しようと思ったが
これらの本は傷みが激しい為、直接コピーはNGという事だった。
マイクロフィルムをモノクロ出力するという方法もあるらしいが
色とりどりのカラーが魅力なので・・と何度かお願いして
「正義の一弾」の表紙のみカラーコピーが許された。
受付の人によって判断が違うのかなあ・・

謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影

謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影