映画「アメリカを売った男」

http://www.breach-movie.jp/

1985年から2001年にかけてアメリカの極秘情報をロシアに流していた
スパイの定年間近のFBI勤務の男ロバート・ハンソン
(クリス・クーポー)と、その男の監視を上司に命じられ、
部下としてハンソンと行動を共にするようになる
若いFBI捜査官エリック・オニール(ライアン・フィリップ)の物語。

若いエリックは圧倒的な存在感のハンソンに警戒を持ちながら近付くも、
厳しい社会生活の中で人生経験の違いから年長者に畏縮し、
緊張感を強いられ、常に組織の中で自身の力が過小評価されていると
嘆く。会社勤めする人間には共感できる事が多いのではないでしょうか?

スパイ、ならびに奇妙な性癖のあるハンソンに注意を持てと
任務を受けたはずが、そのようなそぶりがまったく見えず、
厳しくまじめで、そして休日には自宅に誘われ、
平日とは違う優しい家庭の父親ぶりすら見せる
ハンソンにいつしかエリックは、はじめに監視するよう命じた側の
本当の上司に疑問を抱くようになりつつあります。
しかしあくまで業務を全うし、最後はハンソンを追い詰めて行く事に
成功していくのですが・・

実際にあった事件をモチーフに、心理合戦でグイグイと魅せていく
展開に大変引込まれ、映画を見終わった後も余韻に浸りたくて、
他の映画をハシゴする事をやめてしまったくらい面白い作品でした。

結局、ハンソンがなぜスパイをするようになってしまった明確な
理由には触れられてはいませんが、人はどこか心理の奥に、
幼少時代の親から受けたトラウマや、組織の中で自分だけは
特別な存在でありたいと思う心理があるのではないか?と
精神鑑定分析がなされているようです。

地味な作品ですが、洋服や小道具、インテリアなどにちょっとした
シャレたセンスが日本映画にはないもので、
国内で似たモチーフで制作しようとしたら随分しめった印象に
なるのだろうなあ。

東京の上映は日比谷シャンテシネ1館のみで、高い年齢層が
以外と多かった。しかし、同じ建物で上映中のコーエン兄弟の新作
ノーカントリー」を見ようとする人が圧倒的。
今回音楽が控えめらしいけど、こちらも見たい作品です。